現代の私たちの生活様式は人工光(照明器具の光)の下で過ごす時間が1日の大半を占めています。そこで光が与える身体への影響という視点から、人に寄り添う照明計画を考えてみたいと思います。
今回は光がどのように人体に影響を及ぼしているのかという説明なので、ややこしい話はすっ飛ばして計画内容を知りたいという方は次回更新する「光と健康の関係②」をご覧ください。
光と生体リズム(サーカディアンリズム)の関係
人工光が存在しなかった時代は、日が昇る頃に活動を始め、日が沈む頃に就寝するという太陽の周期に合わせたリズムで生活していました。
これが生まれながらにして持っている体内時計による「生体リズム」です。
このリズムは「サーカディアンリズム」とも呼ばれ、私たちの健康と深い関わりがあります。
人間のサーカディアンリズムは25時間周期と言われているので、1日1時間のズレが生じます。このズレは朝陽を浴びることでリセットされ規則正しく生活を送ることができています。
つまり「光」は体に時間を認識させてリズムを整える重要な要素となっているのです。
光と睡眠の関係
朝の光はリセット、では夜の光はどのように人体に影響があるのでしょうか。
睡眠に深く関係している「メラトニン」と「セロトニン」というホルモンの分泌には光が重要な役割を果たしています。
メラトニンは睡眠ホルモンとも呼ばれ、夜暗くなるとともに分泌量が増えます。メラトニンの分泌量が増えると深部体温が低下して眠気を感じるようになります。また抗酸化作用によって細胞の新陳代謝を促したり、疲れを取ってくれるので、病気の予防や老化防止にさまざまな効果を持つと考えられており、注目されているホルモンのひとつです。
メラトニンは主に光によって分泌量が調整される為、夜中に強い光を浴びると分泌が抑制され、睡眠障害が起こりやすくなってしまいます。
メラトニンはセロトニンを原料として分泌されます。セロトニンは日中に光を浴びることで分泌量が増えます。セロトニンには精神のバランスをとる役割があるので、不足すると気分が重くなったり、感情のコントロールが不安定になったり、うつ状態になることもあります。
心身の健康の為にも太陽の動きと共に生活するリズムを心掛け、日中は光を浴びて、夜は照明の明るさを絞ったりスマホ画面を寝る直前まで見たりしないことで、質の良い睡眠につながります。
まとめ
スイッチひとつで何時でも明るい照明の下で生活できる時代ですが、私たちの体は自然のリズムに従って動いています。さすがに太陽が沈んだら寝るという訳にはいきませんが、夜は必要最低限の光で過ごし、リラックスした状態で入眠することで健康維持していきましょう。また在宅ワークで外出の機会も減っていると思いますので、起きたらまずはカーテンを開けて朝陽を浴びて体内時計をリセットしてから仕事をしてみてください。頭がスッキリして仕事がはかどるかも…!
今回は光が人体にどのように関係しているかという少し医学的な内容になりましたが、次回はこの関係性を踏まえた上で、照明が健康維持に貢献できる可能性について書いていきたいと思います。良ければまたご覧ください(^^)
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