前回のブログ「光と健康の関係①」では光が私たちに与える影響についてサーカディアンリズムを軸にご説明しました。
今回は本題である、人に寄り添う照明計画を考えてみたいと思います。
前回のブログでお伝えした通り、基本的に太陽のリズムに合わせて生活することが私たちの健康につながります。人工照明で構成された空間であっても時間の流れを感じられる計画にすることで、サーカディアンリズムの乱れを抑え、室内であってもホルモンバランスを整えることは可能です。では時間の流れを感じられる計画とは具体的にどのようなものでしょうか?
・時間帯に合わせて光量を調整する
まず計画の基本となるのは室内の明るさを調整するということです。
朝から昼過ぎにかけては照度を高くすることで、日中に「セロトニン」がしっかりと分泌されて精神バランスが整います。また夜に向かうにつれて減光することで「メラトニン」の分泌を促し、質の良い睡眠をサポートします。
少し前のオフィスにありがちだったのは朝から晩まで白色光が煌々と点灯し、夜でも昼と同じ環境で働き続けられるというものでした。このような環境下では夜になっても「メラトニン」がうまく分泌されず、寝つきが悪くなったり疲れが取れにくくなったりして健康を害してしまうリスクがありました。
そこでまずは照明の明るさで太陽の動きを簡易的に再現するだけでもホルモンバランスを正常に整えることが可能なので、光量の調整を念頭に置いて照明計画を検討することが重要となります。
最近では調光システムも安価に取り入れられるようになってきているので、時間帯によって自動的に設定した明るさに変化していくシステムの導入を検討する価値は十分にあると思います。
・光の色を変化させる
+αで提案したいのが光の色を変えることができる調色機能です。
光の色には人が快適に感じる明るさの範囲というものがあります。例えば、電球色は明るすぎると暑苦しく感じたり、昼白色は暗すぎると陰気な雰囲気になったりという具合です。
その為、調光だけではなく調色機能を取り入れることでより快適な空間を創り出すことが可能になります。調色機能も年々進化して、光の色の変化の幅もかなり広くなってきているので、自然光により近い環境を再現できます。
空間の用途によって運用の仕方は変わりますが一番ベーシックな調光調色の1日での運用例としては下記のようになります。
【早朝】温白色で少し暗め→【日中】昼白色で明るく→【夕方】温白色で少し暗め→【夜】電球色で暗め
・まぶしさをコントロールする
光の色、明るさを調整することで健康的な生活をサポートできることは実証されていますが、照明の制御システムを採用すれば全て解決するわけではありません。ホルモンバランスという観点だけであれば「自然光を再現しましょう!」で終わりますが、健康はそれだけで保たれているわけではないからです。
照明計画としてより人に寄り添う為にはストレスなく過ごせる空間を実現することが大切です。そこで重要になるのが眩しさ(グレア)をいかに低減するかということになります。
光源が直接目に入らないように配慮したり、意匠的に表に見せるテープライトは輝度が高すぎないか確認したり選定する器具は熟考する必要があります。
またオフィスであれば従来通りのベース照明で構成するだけでなく、タスク&アンビエントの考え方を採用して間接光と手元にデスクライトという計画も検討できます。
調光システムを採用すると竣工後に調整が可能というメリットもありますが、それ故に必要以上に器具の数を多くしたりハイパワーにしたりと明るく計画して調光すれば良いや、と設計されている方もいらっしゃると思います。この考え方で計画してしまうと、「明るすぎ」「暗すぎ」というクレームは回避できますが、まぶしさを感じる可能性は高まります。
システムに頼らず、100%点灯した状態でいかに快適な空間に仕上げるかということを考えて丁寧に計画をしていきたいところです。
・まとめ
人に寄り添う照明計画として主に検討したい要素は「調光」「調色」「まぶしさ」
ここに物件ごとの意匠性を活かした演出を加えたり、逆にローコストで実現する為の案を考えたりしながら、その空間で過ごす人が健やかに居られるように計画をすることが照明デザイナーとして不特定多数の方に貢献できるひとつの方法かなと思っています。
ただ綺麗に照らすだけではない、人の役に立つ光というものを今後も考えていきたいと思います。
ここまで読んで頂きありがとうございました。
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